Research & Coordination for multimedia in Paris
Jus de Paradis / ジュ・ド・パラディ
ライン
Column de Paradis  
パラダイス・コラム vol.1

友人から掛かってきた電話で、なんか”いいこと”あった?、なんてよく問いかけるけど、いつも決まって、
"そんなのあるわけ無いじゃん"、と言う答えが返ってくる。
サラリーマンの友人は、「貧乏暇なし、遊んでる暇なんてないし、どうせ金もないから丁度いいよ。」
会社経営してる友人は、「忙しいし体調も悪い、金はあるにはあるけど、先のことを考えると浪費は出来ないよ。」
と言いつつも、頻繁に外食でグルメして、季節ごとに旅行もしている。なかなかしたたかに生きているなあ、と感心する。
そしてフリーランスの友人が、
「貧乏だし、暇なんだよね。こんなに時間があるのに金がないから旅行も行けやしない。あー無駄に暇だあ。」と言う。
「おお、じゃあ、一緒に
”いいこと”を見つけてみよう!」
と言うこととなった。
 
 
そこで浮上したのが財布の中で眠っていた映画のただ券だ。
大手企業に勤務する友人から譲り受けたもので、会うたびにくれるのですでに4枚もたまっているのに、いまだに恩恵に与る機会がなかった。
ちなみに大手企業では社員に数々のご優待券などが還元されるらしく、どこへ行っても優遇される手段がある。たとえばこの友人の会社は、協賛する数々のイベントにはVIP席が取れる。特にテニスのフレンチオープンをビュッフェ付きのVIPとして観戦出来るのはテニスオタクの私としては非常にうらやましい。
「映画のただ券あるよ。4枚あるから2人で2回行けるよ。」
「映画と言えば、『TOKYO』っていう邦画、今こっちでやってるよ。」
「いいねえ、蒼井優ちゃんかわいいし、行こう行こう。」
と、事はすんなり決まり、友人が、上映情報を調べておくから後日改めて日取りを決めよう、と言って電話を切った。
 それから数日後、その友人から電話があり、シャンゼリゼ近くの小さいシネマで上映中で、そのシネマのただ券を持っている友人からお誘いがあったから一緒に行かないかという話になった。とにかく、その知り合いが30枚くらい優待券を持ってるというのだ。今度の木曜にシャンゼリゼのマクドナルドに1時45分のランデブーで、トータル何人来るかは不明。
「そんなにたくさん映画館に入れんの?」
「30人はさすがに集まらないと思うよ。とにかく、映画の前にマクドで昼飯食べようか、12時半頃でいい?」
「OK、じゃ木曜日に。」
 
 しかし、前日なって都合が悪くなった私は電話を掛けてドタキャン。
 ところが逆に友人からもドタキャン宣言をされてしまった。
「ちょうど電話しようと思ってたんだけど、『TOKYO』上映が今日で終わりなんだって。譲ってもらうはずの優待券はその映画館だけしか使えないから、たった今中止になったところでした。」

 いかにCARAXがメガホンを取ろうとも、オムニバス作品とあってか上映はマイナーシネマのみで、大手企業がご優待してくれるメジャー映画館では見られない。悲しいかな、『TOKYO』に出ている優ちゃんのガーターベルト姿は当分拝めそうもない。
 いや、もちろんお金を払えば見られるんだけど、普通に映画を見てもなんだか”いいこと”感が足りない気がする。この際、ただ券にこだわらなきゃ意味がない。
しょうがないから別の映画を見ることにする。
デカプリオやジェームス・ボンドがマジで走り回るストレスいっぱいのアクション映画は疲れそうだからなんとなく見たくない。フランス映画にポーランド映画、ドイツ映画とかいろいろあるけれど、なんとなくバルセロナと言う街に引かれてしまったのが
『Vicky Christina Barcelona』 旅行者のアメリカ女とスペイン人の画家とその元妻のラブコメディ。Woody Allen's movieである。
私の知る限り、スペイン人の男は恐ろしくおしゃべりで(本当に半端じゃない)、スペイン人の女は我が強くて可愛らしくて実はすっごく嫉妬深い(これもかなりマジ)、そんな世界にへらへらしたアメリカ女が入っていったらどんなことになるのか見てみたい気がしたのだ。

続く
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